多項式版フェルマーの最終定理の正則関数への拡張

※以下は多少雑な記事となっているので広い心で読んでくれると嬉しいです。

多項式フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理とは

フェルマーの最終定理

nを3以上の整数とした時、

x^{n}+y^{n}=z^{n}

を満たす正の整数の組(x,y,z)は存在しない。

という定理であり、1994年にワイルズ氏によって証明されました。多項式フェルマーの最終定理は「正の整数の組(x,y,z)」を「非自明な(複素数係数)多項式の組(f(x),g(x),h(x))」にそっくりそのまま書き換えたものです。(ここでの非自明な関数の組とは、どのふたつの関数の比も定数関数でないことを意味します)

多項式フェルマーの最終定理

nを3以上の整数とした時、

f(z)^{n}+g(z)^{n}=h(z)^{n}

を満たす非自明な(複素数係数)多項式の組(f(z),g(z),h(z))は存在しない。

n=2の時の反例は(1-z^{2},2z^{2},1+z^{2})です。この定理の証明はネットで調べればすぐ出てくると思います。(微分さえ知ってれば証明できます)

⚫正則関数への拡張

多項式フェルマーの最終定理

nを3以上の整数とした時、

f(z)^{n}+g(z)^{n}=1

を満たす非定数有理関数の組(f(z),g(z))は存在しない。

と同値であることは簡単に確認できます。ここで「有理関数」を「有理型関数」に拡張したらどうなるでしょうか?有理関数については既に分かっているので超越有理型関数に絞って調べます。超越有理型関数については次の定理が成り立ちます。

分岐定理

ある超越有理型関数f(z)が与えられているとする。

f(z)=aの解が無限個ありその重複度が全てV_a以上である時(有限個の場合はV_a=\inftyとする)、

\sum_{a\in\mathbb{C}\cup\{\infty\}}(1-{V_a}^{-1})\leq2

を満たす。

この定理はネヴァンリンナの第二主要定理と呼ばれるネヴァンリンナ理論の中心定理から導くことができます。この記事ではネヴァンリンナ理論の内容には踏み込まないつもりですが、今後記事にしていけたらいいなと思っています。

さて分岐定理を使って何が言えるでしょうか。

正整数kに対し、超越有理型関数f(z),g(z)が存在し、

f(z)^{k}+g(z)^{k}=1

が成り立っている時、簡単な式変形により、

f(z)^{k}=\prod_{i=0}^{k-1} (1-\zeta^{i}g(z))

※ただし\zeta =\exp(2\pi i/k)

であり、これは

g(z)=\zeta^{i}(i=0,...,k-1)は無限個のk重解(または有限個の解)を持つ

ということを意味しています。そしてk\geq 4のときは上の分岐定理に反することが簡単な計算で確かめることができます。よって次のことが言えます。

kを4以上の整数とした時、

f(z)^{k}+g(z)^{k}=1

を満たす非自明な超越有理型関数の組(f(z),g(z))は存在しない。

ではk=3のときはどうでしょうか?実はk=3のときには反例が存在します。この反例を構成するのも面白いのでまた別な記事で書こうと思います。

⚫結論

以上の結果から、正則関数版フェルマーの最終定理

正則関数版フェルマーの最終定理

kを4以上の整数とした時、

f(z)^{k}+g(z)^{k}=h(z)^{k}

を満たす非自明な正則関数の組(f(z),g(z),h(z))は存在しない。

となります。k=3に反例があるのに’’フェルマーの最終定理’’の名前を使っていいのか、という感じはありますが、多項式と正則関数の性質の面白い差とも言えるんじゃないでしょうか。

色々と不完全で読みづらい記事となってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。大きな誤りの発見やアドバイス等ありましたらコメントよろしくお願いします。